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    おにぎりの思い出




    「おはようっ!しんいち」

    いつもより元気な声で、おさななじみにあいさつをする。

    だいじょうぶ。

    ちゃんと笑えてる。

    しんいちは一瞬戸惑った顔をしたあと、にっこりと笑ってくれた。

    「おう!おはよ。」

    その一瞬の間で、しんいちはぜんぶ知ってるんだ、って分かった。

    それがわかったらまたどうしても泣きたくなったけど、
    いっしょうけんめい涙をこらえる。

    「これ、母さんが持って行けって。」

    しんいちが渡してくれたバスケットには、

    色鮮やかで美味しそうなサンドイッチが入っていた。

    あさ作ったおにぎりは、塩を入れすぎて食べられなかった。

    サンドイッチからいいにおいがして、わたしのおなかは

    ぐぅ、と鳴った。

    でも。

    「いらない。おにぎり作って食べたから。」

    わたしがそう言うと、しんいちは少しだけ悲しそうな顔をしてわたしを見た。

    しんいちを見たら泣きそうになって、下を向いて涙をこらえる。

    「そっか。そのおにぎり、まだ残ってるか?」

    「…うん。」

    「じゃあ、俺も食いたい!」

    しんいちの言ったことにおどろいて顔をあげると

    しんいちはにっこりと笑っていた。

    「蘭の作ったおにぎり、俺も食いたい。」

    「っだ…だめ!」

    おにぎりは塩からかった。

    おいしくできなかった。

    しんいちに知られたくなくて、必死でダメって言った。


    でもしんいちは、わたしがどんなに嫌だと言ってもにこにこ笑って、食べたいって言った。

    「…失敗しちゃったの。」

    「うん」

    「…おいしくできなかった」

    「うん」

    「…おいしくできたら、わたしがもっといい子だったら…おかあさんが帰ってきてくれるとおもったのに…」

    「うん」

    「おいしくできなかった…っ」

    途中から、じぶんでもわけがわからなくなって、

    しんいちの前でたくさん泣いてた。

    「おいしくなくてもいいよ。それでも俺は、蘭の作ったおにぎりが食べたい。」


    しんいちの目は優しくて、暖かかった。


    ぐちゃぐちゃに散らかったキッチンに、塩からくて形の悪いおにぎり。

    おにぎりを食べてしんいちは「からいな。」って笑った。

    わたしが「ごめんね」っていうと、しんいちは「からくても、蘭の作ったおにぎりはおいしいよ」っていってくれた。

    たくさんあったおにぎりを全部食べたしんいちは、わたしにサンドイッチを渡した。

    「蘭のごはん食べちゃってごめんな。代わりにこれ食べろよ。」

    美味しそうなサンドイッチを見て、わたしのお腹はまたぐぅ、と鳴いた。

    「…いただきます。」

    美味しいサンドイッチが嬉しくて、羨ましくて、食べながらたくさん泣いた。

    しんいちはなにも言わなかったけど、わたしがしんいちを見るとにっこりと優しく笑ってくれた。

    「しんいちのお母さんみたいに、美味しいごはんが作れるようになったら…おかあさん帰ってきてくれるかな?」

    わたしが聞くと、しんいちは笑って頷いてくれた。

    「じゃあ、母さんに習わないとな。毎日家に来て、夕飯作るんだぞ?それから蘭の作った飯を俺が評価してやるから、食べる時も一緒な?おっちゃんの仕事が終わるまで、蘭は毎日俺の家で料理の勉強をすること!できるか?」

    「うんっ!わたし、頑張る!!」

    もう、涙は止まっていた。

    勉強といいながら、わたしがしんいちの家に行くように仕向けてくれた新一の優しさに気付くのは何年も先のことなのだけど、あの時はただ、しんいちの笑顔で、心がとても暖かかった。







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    君の好きな人


    快斗くんが蘭ちゃんに片想いするお話です。

    苦手な方はUターンをお願いします。

    切ないお話が書いてみたくて挑戦しましたが、下手くそでごめんなさい。

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    工藤新一江戸川コナン生誕祭 小説

    新一BD小説

    新蘭中学1年生


    「新ちゃんっ!お誕生日おめでとうっ!!」

    「おめでとう新一。新一ももう13か。大きくなったな。」

    朝起きて、下へ降りるといつもより弾んだ様子で料理を作る母さんと、優しく笑う父さん。

    そんな2人に「おめでとう」と言われて初めてああ、今日は俺の誕生日なんだっけ?と自分の誕生日を思い出す。

    誕生日だからと言って特別浮かれることもない。

    誕生日の楽しみといえば、毎年父さんがプレゼントでくれる海外でしか手に入らない小説や雑誌くらいだ。

    そう思うのに、心の中では何故か虚無感が膨らんでいく。

    そう言えば…去年も、一昨年も、その前もずっと…蘭と出会ってから、俺の誕生日は毎年蘭に起こされる所から始まったんだよな…

    「しんいちっ!おはよう!起きてっ!今日はしんいちの誕生日だよっ!!誕生日おめでとう!!」

    俺の誕生日なのに、俺よりも嬉しそうな顔で笑う蘭。

    「誕生日おめでとう」両親や友人に俺がそう言われれば、「よかったね」と天使のように微笑む蘭。

    誕生日なんて何も特別なことはないのに、俺の為に終始嬉しそうな蘭の笑顔が見られるのなら俺の誕生日は特別なのかもしれない。そんな風に思える誕生日を毎年与えてくれていた幼馴染みは、昨日から高熱を出していて今日は姿を見ることが出来ない。

    誕生日なのに…会えねーのか…。

    「ほら新一。今年は中学生になったからな。海外で人気のミステリー小説だ。敢えて日本語訳のないものを選んだよ。自分で和訳して読みなさい。分からない所は人に聞かず、出来るだけ自分で調べるんだよ?それでも分からなかったら、父さんがヒントをあげよう。」

    「ありがとう、父さん!」

    落胆している気持ちを見抜かれないよう、努めて明るい声を出して受け取った。

    いつもなら宝物に見える小説が、今はただの紙切れにしか見えなくて
    俺の頭は相当蘭にヤられてるな、と今更ながらの事を思って心の中で苦笑する。


    「新ちゃん!私からは実はまだ用意していないの。何か欲しいものはある?」

    楽しそうに言う母さんの質問に、心の中では即答で

    ”蘭に会いたい”と洩らすが勿論そんな事を言えるはずも無くて

    「や、別に今欲しいものねーから、いいよ。」

    と軽く答えると、母さんはほんの少し残念そうな顔をした。

    「全く…相変わらずなんだから。新ちゃんは!!もう、適当に決めちゃうからね!」

    拗ねたように言う母さんがキッチンへ消えていくのを見ていると、Rrrr…と家の電話が鳴った。

    「あ、俺出る!」

    電話に出ようとする母さんを慌てて制して、期待を込めて電話に出ると案の定受話器の先にはいつもより少し怠そうな幼馴染みの声。

    「もしもし、しんいち?誕生日おめでとう!」

    きっと受話器越しに笑っているのだろう、ふふっという笑い声が聞こえて俺の気持ちは少しだけ浮上する。

    「んな事よりオメー、体調はどうなんだよ?」

    声が聞けて嬉しい、そんな気持ちがバレないように気持ちを抑えて問いかける。

    「………体調?全然、大丈夫だよっ!」

    「オメーの大丈夫はアテになんねーよ!もう少ししたら…見舞いに行ってやるよ」

    そうだ。会えないのなら会いに行けばいいんだ!そう思った瞬間、一気に気持ちが浮上した。

    しかし、蘭はそんな俺の提案に乗ってはくれなかった。

    「ダ、ダメっ!!!絶対、絶対来ちゃダメだからね!!!!」

    「…なんでだよ?」

    「しっしんいちに、風邪がうつったら大変だからっ!!」

    「大丈夫だって。うつんねーから!」

    「でもっ…ダメ!絶対ダメっ!!!!!」

    「だからっ!なんでダメなんだよっ!?」

    「そ…それは…言えないっ!!」

    頑なに拒否をする蘭に違和感を感じ、会いたいのに会えないもどかしさに苛立ちを覚える。

    「はっ?んだよソレ…別に俺が行ったっていいじゃねーか」

    「絶対ダメ!!!!来たら…新一とはもう絶交だからっ…!!」

    「訳わかんねぇっ!そこまで嫌ならもう行かねーよっ!!」

    折角会えると思ったのに、会えないどころかここまで拒否をされる事に少なからず傷ついた俺は感情のまま一方的に電話を切った。


    …なんなんだよ蘭のやつ!!!今日は俺の誕生日なのに…



    苛立つ気持ちと落胆した気持ちを込めて盛大なため息を吐くと、背後から心配そうな声が降ってきた。

    「新ちゃん、蘭ちゃん具合どうだって?」

    蘭からの電話だなんて一言も言っていないのに、お見通しらしい母さんは俺の様子を伺いながら聞いてきた。


    「…大丈夫つってたけど、多分大丈夫じゃねーと思う。」

    「そう…心配ね。それで、どうして喧嘩になっちゃったの?」

    いつもの茶化す様子ではなく、心配そうに眉を下げる母さんには誤魔化しが効かないので正直に答える。

    「お見舞いに行くっつったのに、絶対来るなって言うからイラっとして………俺が一方的に電話切った。」

    蘭の事だ。風邪をうつしてはいけないと思って必死に止めたんだろう。もしかしたら、俺に隠しているけど物凄く体調が悪いのかもしれない。そんな事、頭では分かっている筈なのに蘭に会いたいという一方的な思いが叶わなかった事に苛立って俺は蘭に八つ当たりしたんだ。

    自分の未熟さに嫌気がさして下を向くと、俺の話を聞いた母さんは何も言わずに俺の肩をポンと叩いた。

    「さ、新ちゃん!ご飯食べましょっ!今日は特別な日だから、夜のパーティーに向けてお母さん張り切って朝食も沢山作っちゃった!…お腹がいっぱいになったら、蘭ちゃんに電話して謝りましょうねっ」

    母さんに腕を引かれてリビングへ戻ると、いつもより何品も多く豪華な朝食に驚いた。


    少し照れくさい家族3人の朝食を済ませると、すぐに受話器の前へと足を運ぶ。

    幼い頃からかけ慣れた番号を打ち込んで耳に当てると

    Rrrrr…という無機質な呼び出し音が耳に届いた。

    暫く呼び出し音を聞いていると、その電話は留守番電話の案内を始めた。


    …寝ちまったのか?

    一度寝たら起きないのが蘭だ。寝てしまえば電話に気づく筈がない。しかし、蘭の家の下には父親が営んでいる探偵事務所があり、自宅の電話は自動的に探偵事務所へ転送される事になっている筈だ。

    だから例え蘭が寝ていたとしても、探偵事務所にいるおっちゃんが出る筈…

    普段なら昼間からビールを飲んで寝ちまうようなおっちゃんが電話に出ない事なんて気にも留めないが、昨日に蘭が高熱を出しているのにビールを飲むような父親ではない。つまり、今日電話に出ないという事は本当に留守にしているという事になる。

    「…母さん。蘭とこのおっちゃんから今日は留守にするとか連絡あったか?」

    「小五郎ちゃん?連絡無いけど…電話、出ないの?」

    「…っやっぱ俺、ちょっと様子見てくる。アイツすぐ無理すっから、体調が悪くてもおっちゃんに依頼が入ったら何でもないふりして送り出しちまうと思うからっ」

    途中からは叫びながら、急いで自室の部屋から上着を取ると何かを言っている母さんの横をすり抜けて玄関へと向かう。


    ”新一とは絶交だから”そう言った蘭の声が一瞬頭を過ぎったが、蘭に何かあってからでは遅い。それならいっそ何も無く、蘭の気が収まるまで絶交された方がマシだ。


    慌てて玄関のドアノブに手をかけると、同時に”ピンポーン”と外からチャイムを鳴らす音が聞こえた。

    そのまま勢い良く扉を開く。

    「うわっ…テメー!ビックリしたじゃねーかっ!」

    驚いたと腰を抜かしそうな体勢で扉の前に立っていたのは蘭の父親で、おっちゃんの背後には見慣れないセダンが停まっていた。その車のナンバーを見て直ぐにおっちゃんが借りたレンタカーだと理解した。

    「おじさんっ…蘭は?!まだ体調悪いんだろっ?」

    病気の蘭を置いてどこほっつき歩いてんだよという嫌味を声に思い切り含ませて聞くと、おっちゃんは不機嫌そうな顔を更に歪ませた。

    「俺はなぁ…蘭が絶対に行くって聞かねーから……」

    「あっ!しんいちっ!良かった。家に居てくれて。しんいちの事だから、電話切った後絶対ウチまで来ちゃうと思って急いで飾り付けしたんだよ!あの時はまだ焼き上がったばかりだったから!でも間に合って良かった!しんいち、お誕生日おめでとうっ」

    おっちゃんの話の途中で車からひょっこり降りてきた蘭は、手作りのケーキの入った箱を俺に差し出してにっこりと微笑んだ。

    「えっ…?オメー、体調悪いんじゃ…」

    「体調なんて、全然大丈夫だよっ!」

    そう言って笑う蘭の顔はほんの少し引きつっていて、無理をしていることなんて一目瞭然だった。

    そんな蘭に向かって、おっちゃんが声を荒げる。

    「大丈夫じゃねーだろうが!まだ熱があるっつーのに早起きしてケーキ作って、挙げ句の果てには新一の家まで歩いていくなんて言うじゃねーか!!」

    …俺の為に?熱があるのに早起きして、ケーキ作ってくれたのか…?

    自分の為に蘭に無理はして欲しくない。そう思うのに、蘭が自分の為に頑張ってくれた事を喜ばずにはいられない。

    「だって…!ちゃんと顔見て、新一におめでとうって伝えたかったんだもんっ…」

    熱で潤んだ瞳でそう言う蘭は可愛くて

    やっぱり誕生日っていいもんだな、と単純な事を考えた。

    「蘭。ありがとな。すっげ嬉しい。でも、もう無理はしないでくれ。…わかるな?」

    優しく蘭の髪を撫でると、蘭は頬をぷぅっと膨らませた。

    「…帰って寝てろって事?嫌だよ!今日は新一の誕生日なんだから、一緒にお祝いするの!!」

    駄々をこねる蘭を愛おしく思うが、流石にこれ以上は心配だ。

    なんとか蘭を休ませようとおっちゃんと2人で試行錯誤するが、頑固な蘭はなかなか俺やおっちゃんの意見に耳を貸さない。

    「あら蘭ちゃんっ!いらっしゃい!体調が悪いのにわざわざ来てくれたのね?ありがとうっ!パーティー始める前に声掛けるから、それまで新ちゃんのベッドで横になっててくれる?」

    暫くすると、玄関前の騒ぎを聞き付けた母さんが出てきて蘭とのやり取りに終止符を打つ。

    「ゆ、ゆきちゃん…蘭は連れて帰るよ…!!」

    納得していないおっちゃんが母さんに向かって言うが、母さんは「遠慮しなくてもいいのよっ!家でゆっくり休ませるから安心して」とぱちっとウィンクを決め込んだ。

    そんな母さんに向かって「有紀子さん、ありがとう!」とはしゃぐ蘭を見て観念したおっちゃんは渋々車に乗ると「じゃあ夜迎えにくるから…」と告げて車を走らせて行った。

    「おい!母さんっ…大丈夫なのかよ?」

    すっかり乗り気の蘭がうきうきと家に上がるのを見届けた後、こっそり母さんに耳打ちすると母さんはニヤリと嫌な笑みを浮かべて言った。

    「何言ってんのよ?新ちゃんったらそんな嬉しそうな顔しちゃって!ちゃんと蘭ちゃんの看病してあげなさいよっ」

    俺の頬をつん、と突いてリビングへ消えて行った母さんに、「うっ、嬉しそうになんてしてねーよ!!!」と必死で反論する。

    ***


    「えへへ。しんいちっ!お誕生日おめでとうっ」


    「………ありがとな。蘭。」


    俺のベッドで横になる蘭に、赤くなった顔がバレないように下を向いてお礼を言うと、蘭の寝息が聞こえてくるまで優しく髪を撫で続けた。




    END


    弟が生意気なので困っています。



    リリリリリ…と煩く鳴り響く目覚ましをなんとか止めると、眩しく室内を照らした朝日の光に目を細める。

    もう一度眠りにつこうと布団を被り直すと、一階から鈴の音が鳴るような声が聞こえた。

    「しんいち~!起きた?起きないと遅刻するわよ!」

    綺麗な声に誘われるように起き上がると、身支度を済ませて下へ降りる。まだ結びきれていない制服のネクタイを結びながら階段を降りると、ダイニングテーブルには彩り鮮やかなサンドイッチが並べられていた。

    引き立ての珈琲の香りに誘われてキッチンを覗くと、制服の上にエプロンを着けて、鼻歌を歌いながら3人分の珈琲カップを並べている蘭を見つけた。

    「あっ!しんいち、おはよう!」

    しばらく様子を見つめていると、俺がいる事に気付いた蘭がにっこりと微笑んだ。

    「………おう。…いつも悪いな。」

    俺の高校入学と同時に本格的に海外へ移って仕事をしている両親に変わって、工藤家の家事全般は俺の”幼馴染兼好きな女”である毛利蘭が受け持ってくれていた。

    「どうしたの?急に。私が好きでやってるんだから、気にしなくていいのに。それより新一、ネクタイ曲がってるよ!」

    蘭はそう言うと食器棚から出した珈琲カップを置いて、俺の前に来てネクタイを直す。

    「ほら、ちょっと斜めになってる。……はいっ!出来たよ!」

    ガキの頃から想いを寄せている女性にエプロン姿でネクタイを直して貰う事への照れ臭さで顔に熱が集中する。

    くそ…可愛いな…!人の気も知らねーで煽りやがって…!!

    心の声が漏れないよう、必死で平常心を取り繕う。

    「あ…ああ。さんきゅ…。」

    赤くなった顔を見られないよう明後日の方向を向くと、後ろからドン、と人影が飛び出してきた。

    飛び出して来た人影は俺と向かい合わせになっている蘭の後ろへ回ると、ハイテンションで蘭に抱き着いた。

    「らぁぁんっ♪おっはよう!」

    「あ、快斗くん。おはよう!」

    好きな女性が目の前で他の男に抱きしめられている姿と、それににっこりと対応する蘭に少々虫の居所が悪くなる。

    「快斗…オメー、朝から何やってんだよ!」

    俺より3つ下の弟…快斗は子供の頃から蘭にベッタリだ。
    子供らしかった快斗もどんどん背が伸びて、最近ではすっかり男になった弟の姿に心中穏やかではいられない。

    「げっ。また新一機嫌わりーのかよ!蘭~…新一がすっげ睨んでくる~」

    中3にもなってアザとく蘭の後ろに隠れる素振りを見せると、蘭はよしよしと背伸びをして何時しか自分の背を追い越した快斗の頭を撫でる。

    「こら新一!快斗くんに優しくしなきゃダメじゃない!」

    蘭が俺に向かって言うと、快斗はべぇっと舌を出した。

    いつまでも快斗に甘い蘭と、いつまでも蘭にベッタリな快斗。


    今まで何度か”快斗も蘭の事が好きなのではないか”と思った事がある。

    しかし、その真意は確かめられないでいる。

    もし聞いて”蘭が好き”だと言われてしまえば俺は、快斗と蘭を取り合わなくてはいけなくなってしまう。

    じゃあ…蘭は?

    蘭が男と話す姿を見るだけで”アイツの事が好きなんじゃないか”と余計な事ばかり考えてしまうので、蘭に関しての自分の情報は全くアテにならない。

    蘭は快斗に対しては、昔から変わらずに弟のように接している…気がするけれど、少し見方を変えれば好きな男とイチャついているようにも見えなくは無い…。


    「なあ、新一!聞いてるか?」

    そんな事をずっと考えていると、不意に快斗が目の前に現れた。

    「ああ…悪い。聞いてなかった。」

    快斗の肩越しに蘭を見ると、蘭は先程並べたカップに珈琲を注いでいるところだった。

    「ったく…そんなに羨ましいなら、新一も蘭に抱きつけばいいんじゃねーの?」


    ニタニタと人を揶揄う時の笑みを浮かべて快斗が言うと、ぶわっと身体に熱が篭る。

    「ッバ…バーロ!俺は別に…っ」

    焦って言葉を返そうとすると、ガチャンと音が聞こえて蘭が珈琲カップを一つひっくり返すのが目に入った。

    「きゃあっ…熱っ!!」

    「らんっ…!!大丈夫かっ!?」

    慌てて快斗の横を抜けて蘭の元に駆け寄ると、蘭は珈琲がかかった手を反対の手で摩っていた。


    「手、見せろ!!」

    蘭の手を取ると、その手は少し赤くなっていた。

    「冷やした方がいいな。氷準備すっから、それまで冷水で冷やしとけよ!」

    水道のセンサーに手をかざして、蘭の手に流水をかける。

    「新一、大丈夫だよ!少しだから冷やさなくても平気。それより早く片付けてご飯食べ無いと遅刻しちゃう…。」

    自分の怪我を蔑ろにする蘭に強めの口調で言い返す。

    「オメーの大丈夫はアテにならねーんだよ!!いいからちゃんと冷やしとけよ!片付けは俺と快斗がやっから!」

    「………もう。大袈裟なんだから…。」

    蘭が何かを呟いたが、その声は俺の耳には届かなかった。


    *****


    氷で蘭の手を冷やし、片付けを済ませると三人で朝食を摂る。

    「なぁ新一、そのタマゴサンド頂戴!!」

    自分の皿をすっかり空にした快斗がニカっと笑ってねだる。

    ガキの頃から変わらない快斗の笑顔に…俺は弱い。

    「は?オメー自分の分食っただろうが!」

    一応抗議はしてみるものの「いいじゃん!俺育ち盛りだし!」
    という快斗に「俺だって育ち盛りだよ」と文句をいいながらも自分の皿からタマゴサンドを掴むと快斗の皿に乗せる。


    …俺も相当、快斗に甘いんだよなぁ。


    そんな事を考えていると、ふふっと楽しそうな蘭の笑い声が聞こえる。

    「私に甘い甘いって言うくせに、新一が一番快斗くんに甘いよねっ!」

    にっこり微笑む蘭と「だろ?新一は俺の手下だからな!」
    と笑う快斗。

    「調子に乗んなよ!」と快斗を睨みつける俺と、それを見てまた笑う蘭。

    いつも通りの、幼馴染み三人の朝。



    *****






    2.兄がヘタレなので困っています



    リリリリリ…と鳴り響いていた隣の部屋の目覚ましの音が消えると、直後に一階から弾んだ声が聞こえる。


    「しんいち~!起きた?起きないと遅刻するわよ!」


    兄と幼馴染みの夫婦のようなやり取りも昔から変わらない光景で、今日も平和な朝だな。と1人鼻歌を歌いながらワックスで髪をセットする。


    セットを終えて下に降りると、新一のネクタイを蘭が直しているところだった。

    相変わらずやってる事は夫婦なんだよな…

    と遠巻きに2人を見つめる。

    顔を真っ赤にして嬉しそうな新一に、少し照れくさそうな蘭。

    「出来たよ!」と微笑む蘭を抱きしめることは簡単だろうに、新一はあさっての方向を向いて「さんきゅ。」とぶっきらぼうにお礼を言った。



    ………ったく…!だらしねぇなぁ!!

    幼い頃から新一が蘭に想いを寄せていた事は知っていたし、成長するにつれて蘭も新一に特別な感情を抱いていった事にも気付いていた。


    にしてもアイツら………全っ然進展しねーんだよな…。


    よし。これは俺が一肌脱いでやろうとこの場所で気合を入れるのも、毎朝の事。


    俺は勢い良く飛び出すと蘭の元へ駆け寄り、後ろから抱き締めた。


    「らぁぁんっ♪おっはよう!」

    「あ、快斗くん。おはよう!」


    抱き締められているのに焦る様子もなくにこやかに挨拶する蘭を見れば、俺の事なんて微塵も意識していない事が分かるだろうに、新一の表情は一気に不機嫌になる。


    「快斗…オメー、朝から何やってんだよ!」


    ”俺の蘭に触んな!”というオーラは出ているくせに、新一はそれを言葉には出さない。


    「げっ。また新一機嫌わりーのかよ!蘭~…新一がすっげ睨んでくる~」

    しっかりしろよ!と思いつつ、新一と蘭をからかうのは面白い。

    アザとく蘭の後ろに隠れる素振りをすると、蘭はよしよしと背伸びをして俺の頭を撫でる。

    「こら新一!快斗くんに優しくしなきゃダメじゃない!」

    そして、いつも通り蘭に怒られて不貞腐れる新一。


    いつまでも俺に甘い蘭と中々報われない新一。

    そんな2人と過ごす時間は昔から居心地が良かった。


    俺が物心ついた時から多分新一は蘭の事が好きだったし、蘭は俺にとって”姉”だった。

    そんな2人を応援したいと思ったのは、もうずっとガキの頃の話だ。


    新一の方に目をやると、新一は遠くを見つめて物思いに耽っていた。

    「おーい!なにぼーっとしてんだよ!」

    揶揄おうと近付いてみるが、新一の反応はない。


    「なあ、新一!聞いてるか?」

    新一の顔を覗き込むと

    「ああ…悪い。聞いてなかった。」

    とぶっきらぼうに言った。

    その後すぐに新一は俺の肩を通して蘭を見つめる。


    おーおー、お熱いこった。


    「そんなに羨ましいなら、新一も蘭に抱きつけばいいんじゃねーの?」


    揶揄うスイッチに火が付いて新一に絡むと、新一の顔はみるみる真っ赤になった。

    「ッバ…バーロ!俺は別に…っ」

    新一が言い終わらないうちに、ガチャンと背後から食器の音が聞こえて振り返る。

    「きゃあっ…熱っ!!」

    どうやら蘭が引き立ての珈琲の入ったカップをひっくり返してしまったようだった。

    慌てて駆け寄ろうとすると、光の速さで新一が蘭の元へと向かう。

    「らんっ…!!大丈夫かっ!?手、見せろ!!」

    新一は真っ青な顔で蘭の手を取ると珈琲のかかった箇所を確認すると

    「冷やした方がいいな。氷準備すっから、それまで冷水で冷やしとけよ!」

    と強引に蘭の手を引いて水道の水にさらした。


    「新一、大丈夫だよ!少しだから冷やさなくても平気。それより早く片付けてご飯食べ無いと遅刻しちゃう…。」


    新一に触れられて真っ赤になっている蘭は照れているのか伏し目がちに言うが、新一はそんな蘭に強めの口調で言い返す。


    「オメーの大丈夫はアテにならねーんだよ!!いいからちゃんと冷やしとけよ!片付けは俺と快斗がやっから!」

    な?とこちらを向いた新一にコクリと頷くと、新一は氷の準備を始めた。

    「………もう。大袈裟なんだから…。」

    離れていく新一にそう呟いた蘭はとても嬉しそうだった。


    「ごめんな。変なこと言っちまって…」

    新一の目を盗んで蘭に謝ると、蘭は

    「べ…別に動揺した訳じゃないよ?!」

    とまたまた真っ赤になって言ったので、俺はつい可笑しくて笑ってしまった。


    *****


    「美味っ!やっぱ蘭の作るご飯って最高っ!!」

    朝食のサンドイッチにパクつきながらいうと、蘭はありがとうと微笑んだ。

    その後新一の反応が気になるらしい蘭は新一を見つめるが、新一はなにも言わない。

    「なぁ新一っ!蘭の料理って最高だよな!!」

    俺が新一に助け舟を出すと、新一はまたまた顔を赤くして

    「ま、料理だけは美味いんじゃねーの?」と揶揄うように言う。

    すると蘭はすかさず「だけってどういう意味よ!」

    と突っ込みを入れて、いつも通りの痴話喧嘩が始まった。

    ったく…美味いくらい照れずに言えねーのかよ!!

    兄のヘタレっぷりに呆れる反面、楽しそうに喧嘩をしている2人を微笑ましくも感じる。



    「なぁ新一、そのタマゴサンド頂戴!!」

    自分の皿が空になったので新一にねだると、新一は文句を言いながらも自分の皿からタマゴサンドを俺の皿へうつした。

    なんだかんだ新一も俺に甘い。

    ガキの頃から新一は俺の望みをなんでも叶えてくれた。

    ケーキがもっと食べたいと言えば自分の分を譲ってくれたし、サッカーが上手くなりたいと言えば連日練習に付き合ってくれた。

    たった3つしか離れていないのに、なんでも出来る新一は俺にとってヒーローみたいな存在だった。


    そんな新一が、一度だけ俺の我儘に答えてくれないことがあった。

    それはまだ俺が小学校に上がる前、ほんの冗談で新一に

    「俺、蘭と結婚してもいい?」と聞いた時のこと。


    その時新一は酷く悲しい表情で「ごめんな…。」とだけ呟いた。


    その時初めて俺は”新一から蘭を奪ってはいけない”と胸に深く刻み込んだ。


    昔の事を思い出していると、ふふっと楽しそうな蘭の笑い声が聞こえてきた。

    「私に甘い甘いって言うくせに、新一が一番快斗くんに甘いよねっ!」

    にっこり微笑む蘭に便乗して「だろ?新一は俺の手下だからな!」
    と新一を揶揄う。

    すると新一は「調子に乗んなよ!」と俺を睨み付け、それを見てまた笑う蘭。

    いつも通りの、幼馴染み三人の朝。



    *****



    「おはよう!快斗くんっ…」

    中学生にしては大きめな胸を見せつけるように揺らして、クラスのアイドル的存在の女が誘うように近付いてくる。

    現実なんて結局はこんなもので、新一と蘭の純愛っぷりなんてもはや天然記念物モノに感じる。

    いつもなら今日も可愛いねー!とそのまま誘い込んで使われていない古校舎で1限目を熱く過ごすのだけど、今日は朝から戯れ合う夫婦を見たせいか全くその気になれない。

    「あー…おはよ。」

    簡潔に挨拶だけ済ませると、あとは無視して自分の席へと座る。

    いつも以上に退屈さを感じているのは何故だろう。


    何をするわけでもなくボーッとしている間に予鈴が鳴り、担任がガラッと荒っぽく教室の扉を開けた。


    「お前ら、今日は転校生を紹介するぞー!」


    七三に髪を固めている古臭い担任が挨拶もなしに叫ぶと、教室中がわっと湧き上がる。


    騒がしい声が少し収まると、担任が廊下に向かって合図を送った。


    担任の合図に合わせて、教室に他校のセーラー服を着た女子生徒が入ってきた。


    女子生徒は教室の前方でぺこり頭を下げると、花が咲くようににっこりと微笑んだ。

    「中森青子です!江古田中学から来ました。宜しくお願いします!」

    凛とした立ち振る舞いに、爽やかなブルーの瞳。

    可愛らしい声や仕草に視線が釘付けになる。


    まるで、転校生以外の全ての色がモノクロになったような不思議な感覚に囚われる。


    「青子ちゃん!可愛いぃぃ!!」
    「彼氏いるのー?」
    「はいはい!俺、立候補しまーす!」
    「テメ、抜け駆けすんなよー!」


    興奮した男子生徒からの次々の野次を苦笑いで交わしている転校生を見つめていると、クラスの誰かが

    「快斗~!見とれ過ぎだぞ!!」

    と突っ込みを入れてきた。

    悪ノリの激しいクラスメイトたちは面白いおもちゃを見つけたかのように転校生からシフトチェンジして俺に集中攻撃を浴びせてくる。


    「別に見とれてねーよ!ただ…胸が小せぇなと思っただけだよ!!」



    ……………ボスっと音を立てて俺の顔面に黒板消しが命中した瞬間、変わらない日常が変化していく予感がした。







    コメント返信&雑記

    今日はコナン映画観て、コナンカフェ大阪へ行ってきましたヾ(*'∀`*)ノ♡ヾ(*'∀`*)ノ

    一日中コナンに浸れて…幸せな一日になりました!



    いつもコメントをありがとうございます。
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    いつもブログを覗いてくださる方々に、心から感謝しています。

    これからも、ほんの少しでも皆さんに萌えを届けられるよう頑張ります!
    よろしくお願いします(〃艸〃)♡♡♡


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    Author:yurikamome
    HN yurikamomeで小説書きます!!
    FCBLOGも初めてなので是非コメント頂けると
    嬉しいですvv
    名探偵コナン大好きで蘭ちゃん大好きです!

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